こんにちは。
今回は、カヤックフィッシングの再乗艇についての考察記事です。
一年以上にわたり考えていたのですが、やっと自分なりの結論がでた気がするので、お恥ずかしい出来事も紹介したいと思います。
否定的なご意見があるのは承知していますが、コメントいただいても反論しませんし、公開せずに私自身で受け止めて、もっと安全に楽しむための参考にさせていただきます。
一方で、自分の命を自分でどう守るか?ということを考える上で、この記事をご参考にしていただける方がいらっしゃいましたら幸いです。
- カヤックへの再乗艇訓練
- カヤックフィッシングでの安全対策
- 波に対する安定性がいいカヤックでも転覆する
- さらに予期せぬ事態
- 再乗艇の、力学・機構学的考察
- 再乗艇の失敗例
- 再乗艇の成功プロセス
- 楽に早く再乗艇する方法
- フェールセーフ的ライフベルト
- ライフベルト風のフロート
カヤックへの再乗艇訓練
もう数年前になりますが、カヤックフィッシングを始めるにあたり、私も再乗艇の訓練をしました。
動画サイトで先輩方の再乗艇の様子をじっくり見させていただき、自分のカヤックに置き換えてイメージトレーンイングをしてから、海岸近くの浅い場所でカヤックをひっくりかえして再乗艇してみた時のことを、まだ鮮明に覚えています。
カヤックを水平方向に自分に引き付けて、カヤックのへりが自分のおへその下あたりを通過すると、意外にあっさりと再乗艇できました。
ただし、フル積載状態のカヤックではなく、また海岸近くの水深2mほどの安心感がある場所だったのが、実釣中に落水した場合との違いでした。
カヤックフィッシングでの安全対策
カヤックフィッシングにおいて、私なりに安全に対して最大限の配慮をしようと心がけています。
転覆しないようにする!ことも、その一つですが、後ほど紹介するとおり、自然相手では思いもしなかったことが起きるということを、実際に身をもって経験しました。
少し時間がかかってしましましたが、ようやく自分が納得できる対策が見つかったので、これからカヤックフィッシングを始める方が、安全にカヤックフィッシングを楽しむための参考にしていただくために記事にしています。
ただし、私が紹介していることをしていれば安全ですよ!とは、全く思いません。
カヤックの特性、漕ぐ人の体格や体力など、個々で異なる要素によって安全対策も違ってくるはずです。
波に対する安定性がいいカヤックでも転覆する
さて、だんだんとお恥ずかしい話になってきます。
私が使っているカヤックは、幅が90cmあり、横波に対する安定性は比較的に良い部類になります。
少し風が強めの11月のある日、丘に囲まれた湾内の、風裏にあたる場所でカヤックフィッシングをしていました。
湾外で白波がたつほどの風ではありませんでしたが、風と潮が反対方向で、釣り糸が垂直に落ちずに釣りにくかったので、湾内の陸(岩礁)近くにいたような状況です。
その状況で、このままだと潮にのって湾外に出てしまいそうだな~と感じて、カヤックを戻すためにジグを回収し終わった時、突然カヤックが強い力で横方法の回転を始めました。
後ほど冷静になってから理解したのは、水面を境にして上下で全く逆方向の力が働いていたことです。
- 水面下; 潮の流れで、カヤック(特にペダルドライブユニット)が左から押された
- 空中;風でカヤックが右から押された
湾の出口で水の流れや風が急激に変わる場所だったため、特に水面下での水流変化により、一気に横方向の回転力が加わったと思われます。
(ちなみに水深は40m以上あって水面下に岩礁がそびえていることもなく、また付近に漁具もありませんでした。)
こんな体験は初めてだったので、心の準備ができておらず、訳がわからないままで、足をすくわれるたように転覆してしまいました。
この出来事よりも前は、スクリューをまわすための重力物がカヤックから下方向に伸びている足漕ぎカヤックは、パドル推進のカヤックより安定性がいいと思っていました。
しかし、実際には、海流の急激な変化には弱いということを、身をもって学習することになりました。
この点については、今後は
- 海流の急な変化がありそうな場所には近づかない
- 潮目を超える時も油断せずに推進力を保って侵入する
ことで対策したいと思います。
さらに予期せぬ事態
落水後、訓練でやったとおりに転覆していたカヤックを元に戻します。
足漕ぎカヤックはドライブユニットに体重をかければ、カヤックが簡単に回転するので楽です。
あとは自分をカヤック上に戻すだけだと少し安心して、カヤックのへりにかけた自分の右手を見ると、親指の付け根にアシストフックが深々刺さっていました。
その糸の先は海中のロッドが繋がっており、フックには重さを感じます。
...まずはロッドをカヤックの上に戻します。
....そして、アシストフックを外そうとしますが、フックの返しが皮膚の下から出てきません。
ここで、軽くパニックになります。命の危険がある状況で、一度に多くのことを考えようとすると、本当にパニックになるのですね。
それでも頭をフル回転させて、命と皮膚の大事さを天秤にかけた結果、ナイフで皮膚に切れ目を入れて、フックを引き抜きました。
おそらくですが、この時点で落水から5分くらい経過しています。
その後すぐに開始した一回目の再乗艇は、体が水面より上にあがってこずに、カヤックがまた転覆してしまいました。
あれ? 練習と違って、足が上がってこない!!!
ライフジャケットで浮いていられるので、少し冷静になろうと思って周りを見渡してみると、カヤックと自分が湾外まで流されていることを認識しました。
次の瞬間、
自分の下には60mくらいの深さの海が広がっている恐怖
に襲われます。
冷静になろうとしたのに逆効果で、さらにパニックになりました。
そのような状況で再乗艇に成功する訳もなく、さらに2回失敗を繰り返して、体力を奪われます。
何が起こっていたかというと、長い時間浮かんでいたため、下半身のウェトスーツ生地の着衣が水を吸ったことと、ライフジャケットもだんだん上にズレてきていたことが重なり、浮力が少なくなっていました。
(上半身はドライスーツを着ていて、ほとんど水を吸っていませんでした)
マリンシューズを脱いだり、ライフジャケットを整えつつポケットに入っていた物を出したりして、自分の軽量化やスリム化をすることで、最終的には生きて帰ってくることができましたが、このパニック経験は、
「落水したら、楽に早く 再乗艇できるようにしておくべき」
だという教訓になりました。
再乗艇の、力学・機構学的考察
少し話が逸れますが、先ほどの出来事の後、しばらく遠い場所に住むことになったため、自分のカヤックは使っておりません。
幸いなことに次に浮かぶまでの時間が充分すぎるほどあるので、二度とパニックにならないように対策をじっくりと考える余裕がありました。
気持ちとしては、一刻も早く!また浮きたいのですけどね~
さて話を戻して、もっと楽に早く再乗艇できるようにしたいのですが、まずは再乗艇のプロセスについて、実際にレンタルカヤックで試してみたりしながら必死に考えてみました。
再乗艇の失敗例
まずは、私が何度か失敗した時のプロセスです。
赤色の部分がライフジャケットです。
セオリーどおり、最初にカヤックの反対側をつかみます。
足は、こんな感じで沈んでいこうとします。
着衣が水を吸う生地だと、なおさら足が重く感じられます。
次に、回転しようとするカヤックを、手の平で押さえ付けながら、カヤックをお腹の下に引き付けます。
さらにカヤックを引き寄せて、おへその下まで持ってこられたら成功は近いです。
おへその下にカヤックがあるということは、足の位置は少し上がっていないといけません。
パニック時の私は、重くなった足が上がってきませんでした。
また、ライフジャケットのポケットに少し大きめの物が入っていたため、それがカヤックの側面に引っかかっていました。
その結果、強引におへそ付近に引き寄せたカヤックは回転を始めます。
そして、また転覆!
...という懸垂運動で、無駄に体力を消費することになります。
再乗艇の成功プロセス
それでは、再乗艇に成功する場合の体の動きです。
上半身と下半身で、動きの方向が違います。
- 上半身; 水平方向に近い動き
- 下半身; 垂直方向に近い動き
何度も言ってしまいますが、こんな簡単なことに気づくまでに、一年以上の時間と、何度かの実地トライが必要でした...
足が重くなっていて垂直方向に持ち上げられなかったら、再乗艇できないのも納得です。
それでは「下半身は薄着にして対策すれば?」という話ですが、カヤックフィッシングは夏以外でも楽しみたい!
肌寒い季節に薄着はつらいので、ウェットスーツ(パンツ)でも足を軽くする方法について、次に考えてみます。
楽に早く再乗艇する方法
先ほどの図で紹介したとおり、再乗艇する時に、上半身は比較的に楽に水平方向に動かすことができます。
ということは、下半身もあらかじめ水平(に近い)方向に動かせばよい状態にしておけば再乗艇しやすいはずです。
つまり、フロート類で水面に近づけておけばいい!ということです。
黄色が足用フロートです。
太ももでも足首でもいいのですが、浮力を追加すれば楽にカヤックに上がれます。
レンタルカヤックで試してみたところ、再乗艇が本当に楽になりました。
ただし問題もあり、股や足首の間にフロートを挟んでいると、それを押さえつけているだけでも少し力を奪われます。
かといって、足にしっかりと固定してしまうと、落水してすぐに頭が最初に浮いてくる可能性が少なくなり、たとえば気絶していたとしたら呼吸できるか不安です。
このことから、足用のフロートは、再乗艇する瞬間だけ足に固定できることが必要条件になります。
フェールセーフ的ライフベルト
楽に早く再乗艇する方法をみつけたものの、それでは実際のカヤックフィッシングで何を使おうか?ということを考えるのに、さらに時間がかかりました。
水泳教室でお馴染みのビート板とか...
これは、既にフラッグホルダーとして使っているものですが、落水時にいちいちカヤックから外していると、「早く」再乗艇するというコンセプトには合わなさそうです。
やはり、足用フロートも身に着けている状態で落水したい!(落水は、したくはないけど...)
それから半年たった先日、とうとう見つけました。
ライフベルト風のフロート
落水時に膨らますことができて、足に浮力を追加することができるのは、マリンスポーツ用のライフベルトです。
自動膨張式ではないので、落水後には普段のライフベストで浮いておいて、一旦落ち着いた後で、必要に応じて膨らますことができます。
そして、足への浮力用途でピッタリなのが、胴体には密着しないこと!
チューブ状に膨らんだ後は、ストラップで体に繋がっているだけです。
Restubeの創業者は、水中での危機的な状況を経験された方で、「もっと安全にマリンスポーツを楽しみたい、楽しんでほしい」という思いで、このチューブをドイツで開発しました。
チューブ状の膨張式浮力体は、約14cm幅の小さなポーチに収まっています。
これだけ小さいと、ライフベストと併用しても邪魔にならないので、私の用途にピッタリです。
私は、堤防釣りでも使いたかったので、腰ベルトが付属する「Classic」というモデルを選択しましたが、ライフジャケットに直接装着する場合は、「Sport」や「Active」などのモデルの方が使いやすいと思います。
ポーチの中身はどれもほぼ一緒で、再利用可能なフロートが折りたたまれています。
上の写真では、ボンベは外して写真を撮る際の文鎮がわりにしています(右端付近)が、実際には左端付近に装着されています。
ホイッスルとしても使える黒いツマミを強く引くと、フロートが膨らむ仕組みですね。
それでは、そーっと浮力体をポーチに入れなおして、ライフジャケットに装着してみましょう。
堤防釣りとカヤック両方で使えるように、少しだけベルトを加工していきます。
下の写真が、ストラップを加工したものです。
加工といっても、自作のストラップに変えただけですが、ものすごく短くなり、方向も横から縦に変わりました。
こうしておけば、ライフジャケットへの着脱が、ワンタッチになります。
ライフジャケットの脇腹ストラップに装着していますが、Restubeのポーチの小ささが伝わりますか?
全体像はこんな感じです。
この状態でライフジャケットを装着しておけば、落水時にはライフジャケット自体で浮くことができて、再乗艇のサポート用浮力が必要であればRestubeを膨らますことができます。
膨らんだフロートは、ポーチとストラップで繋がっているので、太ももや足首など、浮力を得たい部位にストラップを巻くことで、再乗艇しやすい態勢をつくることができます。
最後に、ご参考で堤防釣りスタイルも紹介しておきます。
ペンチ、ナイフなどと一緒に、腰ベルトに装着します。
Restubeのポーチ自体は、たいへんコンパクトなので、平常時はその存在を気にせずに釣りもカヤックも楽しめます。
それでは皆様、ご安全にカヤックフィッシングを楽しみましょう!